ゲームセンターはなぜクレーンゲームだらけになった?プライズ売上68%の理由

ゲームセンターの売上の68%を占めるクレーンゲームと、減少したビデオゲーム筐体を比較した記事アイキャッチ ゲーム文化・歴史

ゲームセンターへ行くと、入口から奥までクレーンゲームが並んでいる店舗があります。

格闘ゲーム、音楽ゲーム、メダルゲームが中心だった時代を知る人からすると、ゲームセンターというより「景品を取る場所」に変わったように見えるかもしれません。

なぜ、現在のゲームセンターはクレーンゲームだらけになったのでしょうか。

結論から言えば、プライズゲームは設置台数以上に売上への貢献が大きく、幅広い客層を呼び込みやすいからです。

日本アミューズメント産業協会(JAIA)の2024年度データでは、クレーンゲームなどを含むプライズゲームの売上は4,177億円。ゲームセンター全体の売上6,148億円のうち、68%を占めています。

この記事の結論

  • 2024年度のプライズゲーム売上は4,177億円
  • ゲームセンター全体の売上に占める割合は68%
  • 設置台数の割合は44.1%だが、売上の割合は68%
  • 1台当たりの売上を単純計算すると、プライズ機はその他の機械の約2.7倍
  • 景品、キャラクター、推し活、商業施設との相性が強い
  • 店舗側にとって、クレーンゲームを増やす経営上の理由がある

クレーンゲームの売上はゲームセンター全体の68%

JAIAは、ゲームセンターの売上高、設置台数、店舗数などを継続的に調査しています。

2024年度の主要な数字は次のとおりです。

項目2024年度
ゲームセンター全体の売上高6,148億円
プライズゲーム売上4,177億円
売上に占めるプライズゲームの割合68%
ゲーム機全体の設置台数587,151台
クレーンゲーム等の設置台数258,903台
設置台数に占めるプライズゲームの割合44.1%

ここで重要なのは、設置台数と売上の割合が一致していないことです。

クレーンゲームなどのプライズ機は、設置台数では全体の44.1%です。

しかし、売上では全体の68%を占めています。

つまり、ゲームセンター側から見ると、プライズゲームは設置台数以上に売上を生み出す主力部門になっています。

数字の注意点

JAIAの「プライズゲーム」には、一般的なクレーンゲームだけでなく、景品を獲得するその他のゲーム機も含まれます。そのため、売上68%のすべてがクレーン式遊技機だけの売上という意味ではありません。

1台当たりの売上を単純計算すると約2.7倍

JAIAの売上高と設置台数を使い、1台当たりの年間売上を単純計算してみます。

区分推計売上高設置台数1台当たり年間売上
プライズゲーム4,177億円258,903台約161万円
プライズ以外1,971億円328,248台約60万円

この単純計算では、プライズゲーム1台当たりの年間売上は、その他のゲーム機の約2.7倍です。

月額に直すと、次のようになります。

  • プライズゲーム:1台当たり月約13万4,000円
  • プライズ以外:1台当たり月約5万円

もちろん、これは業界全体の推計売上を設置台数で割っただけの数字です。

店舗の立地、機種、稼働率、景品原価、筐体価格、賃料、人件費などは考慮していません。また、売上であって利益ではありません。

それでも、店舗が限られた床面積へ何を置くか考えた場合、プライズゲームを優先する理由は見えてきます。

同じ1台を置くなら、プライズゲームの方が売上を作りやすい可能性が高いからです。

2013年度からプライズ売上は2倍以上に増えた

クレーンゲーム中心への変化は、2024年度だけの一時的な現象ではありません。

2013年度と2024年度を比較すると、業界の変化がはっきり分かります。

項目2013年度2024年度
ゲームセンター全体の売上高4,564億円6,148億円
プライズゲーム売上1,886億円4,177億円
売上に占める割合41%68%
クレーンゲーム等の設置台数136,096台258,903台
設置台数に占める割合26%44.1%

2013年度から2024年度までに、ゲームセンター全体の売上高は約35%増えました。

一方、プライズゲーム売上は約1,886億円から4,177億円へ増えています。増加率は約121%で、2倍以上です。

クレーンゲーム等の設置台数も、約13万6,000台から約25万9,000台へ増えました。

ゲームセンター市場全体が同じ割合で成長したのではありません。

プライズゲームが市場全体の成長を引っ張ったと見る方が、数字には合っています。

理由1:ゲームを知らない人でも参加しやすい

ビデオゲームや音楽ゲームには、操作方法やルールがあります。

初めて遊ぶ人にとっては、ボタン配置、タイミング、キャラクター性能、ゲーム内の目標などを理解する必要があります。

一方、クレーンゲームの基本的な目的は明確です。

アームを動かして、欲しい景品を狙います。

上手に取るためには知識や技術が必要ですが、遊び始めるまでの説明は少なくて済みます。

そのため、次のような幅広い人が参加できます。

  • 普段テレビゲームを遊ばない人
  • 子どもや家族連れ
  • 買い物途中の来店者
  • 観光客
  • キャラクターや芸能人のファン
  • 景品そのものが欲しい人

ゲームの経験を問わず客にできることは、商業施設内の店舗にとって大きな強みです。

理由2:「ゲームを遊ぶ」と「商品を手に入れる」を一つにした

クレーンゲームは、単に機械を操作するゲームではありません。

成功すれば、ぬいぐるみ、フィギュア、菓子、雑貨などの景品を持ち帰れます。

プレイヤーは、ゲームを遊ぶ体験と商品を手に入れる体験を同時に購入しています。

ビデオゲームの場合、100円を入れて遊んでも、手元に物は残りません。

クレーンゲームの場合は、景品を獲得できる可能性があります。

この違いにより、ゲームセンターを普段利用しない人でも、欲しい景品があれば店へ入る理由が生まれます。

ゲームそのものではなく、景品が集客装置になるのです。

理由3:キャラクター商品と「推し活」の受け皿になった

現在のプライズ景品には、アニメ、漫画、ゲーム、映画、芸能、動画配信など、さまざまな作品や人物に関連した商品があります。

景品は、一般店舗では販売されないアミューズメント専用品も少なくありません。

好きなキャラクターや作品の商品が登場すれば、その作品のファンがゲームセンターへ来店します。

JAIAも、近年の市場回復について、プライズゲーム需要に加え、「推し活」需要やインバウンドの回復が売上を後押ししたと説明しています。

ゲームセンターは、ゲームを遊ぶ人だけの場所ではなくなりました。

キャラクター商品を探す場所、推しの景品を取りに行く場所としても利用されています。

理由4:ショッピングモールとの相性がいい

JAIAは、駅前のゲームセンターが減る一方で、ショッピングセンターなどに出店する大型店舗が増えていると説明しています。

ショッピングモールには、家族連れ、買い物客、飲食店の利用者、映画館の利用者など、最初から幅広い来店者がいます。

クレーンゲームは、一回100円から短時間で遊べるため、買い物や食事の前後に利用しやすい遊びです。

大型筐体だけでなく、小型のクレーンゲームを複数並べることもできます。

商業施設側にとっても、空き区画や通路周辺のスペースを活用しやすい業態です。

2023年度のJAIA資料では、ショッピングセンター・デパート併設店舗が3,072店となり、主要な店舗形態の中で最多でした。

街の独立型ゲームセンターから、商業施設内のファミリー型店舗へ。

店舗形態の変化と、クレーンゲームの増加は別々の現象ではありません。

理由5:プライズ中心へ転換できない店舗は残りにくい

クレーンゲームが増えた理由には、売上が伸びたという前向きな面だけでなく、店舗の生存競争もあります。

JAIAは、プライズ中心の商品構成へ移行できなかった店舗の閉店やM&Aが進んでいると説明しています。

帝国データバンクも、中小規模のゲームセンターについて、筐体価格、景品価格、電気代、人件費などの負担が重く、収益力が低いと分析しています。

格闘ゲームやビデオゲームを中心に営業したくても、それだけでは店舗を維持できない場合があります。

その結果、売上を作りやすいクレーンゲームを増やした店舗が残り、対応できなかった店舗が撤退する。

これも、ゲームセンターがクレーンゲームだらけに見える理由の一つです。

なぜ設置台数44.1%で売上68%になるのか

ここまでを整理すると、プライズゲームには次の特徴があります。

  • ルールが分かりやすい
  • ゲーム経験のない人も遊べる
  • 景品自体が来店理由になる
  • 人気作品やキャラクターと連動できる
  • 短時間で繰り返し遊ばれやすい
  • ショッピングモールの客層と合う
  • 小型機から大型機まで設置方法を選べる

この結果、設置台数では半分以下でも、売上では約7割を占める状況が生まれています。

店舗がクレーンゲームを増やしているのは、流行だけが理由ではありません。

集客できる範囲が広く、限られた床面積から売上を作りやすいからです。

クレーンゲームが増えればゲームセンターは安泰なのか

クレーンゲームが成長しているからといって、ゲームセンター経営が簡単になったわけではありません。

店舗側には、次の費用が発生します。

  • ゲーム筐体の購入・リース費用
  • 景品の仕入れ費用
  • テナント賃料
  • 人件費
  • 電気料金
  • キャッシュレス決済などの手数料
  • 景品の補充・管理コスト

人気景品を仕入れても、設定や陳列が悪ければ遊ばれません。

取れなさすぎれば利用者が離れ、簡単すぎれば店舗側の原価負担が増えます。

クレーンゲームは売上を作る主力ですが、置くだけで利益が出る機械ではありません。

さらに、プライズゲームへの依存度が高まるほど、景品価格、人気作品の動向、仕入れ、競合店舗の出店などに業績が左右されやすくなります。

ビデオゲームが不要になったわけではない

プライズゲームが売上の68%を占めるからといって、ビデオゲーム、音楽ゲーム、メダルゲームなどが不要になったわけではありません。

ゲームセンターへ継続的に通う利用者や、特定のタイトルを遊ぶコミュニティを作る役割は、ほかのゲームにもあります。

音楽ゲームの大会、対戦ゲームの交流、メダルゲームの長時間利用など、プライズゲームとは異なる来店理由を作れます。

ただし、売上構成を見る限り、現在のゲームセンター経営を支える中心がプライズゲームであることは否定できません。

店舗全体をクレーンゲームだけにするか、ほかのゲームと組み合わせるかは、立地や客層によって変わります。

クレーンゲームが増えた理由は「売れるから」だけではない

ゲームセンターでクレーンゲームが増えた最大の理由は、売上への貢献が大きいからです。

しかし、その背景には複数の変化があります。

  • ゲームセンターの主な立地が駅前からショッピングモールへ移った
  • 利用者がゲーム愛好者中心から家族・観光客・ファン層へ広がった
  • キャラクター商品や推し活市場と結び付いた
  • 小型クレーンゲームを含む設置方法が広がった
  • プライズ中心へ転換した店舗が生き残りやすくなった

2013年度には、プライズゲームの売上比率は41%でした。

2024年度には68%です。

クレーンゲームがゲームセンターの一部なのではなく、現在はクレーンゲームがゲームセンター経営の中心になっています。

今回のまとめ

  • 2024年度のプライズゲーム売上は4,177億円
  • ゲームセンター全体の売上6,148億円の68%を占める
  • 設置台数の割合は44.1%で、売上への貢献が大きい
  • 単純計算では1台当たり売上がプライズ以外の約2.7倍
  • ゲーム未経験者、家族、観光客、キャラクターファンも利用する
  • 商業施設との相性と、店舗側の生存戦略が普及を後押しした

前回:日本のゲームセンターは何店舗あるのか

第1回では、警察庁の約4,200件と、JAIAの約1万4,400店で数字が3倍以上違う理由を整理しました。

許可営業所、商業施設内の小規模ゲームコーナー、会員外企業の推計など、ゲームセンターの定義によって店舗数は変わります。

👉 日本のゲームセンターは何店舗ある?警察庁とJAIAで数字が3倍以上違う理由

次回:ゲームセンターは儲からないのか

次回は、ゲームセンターの収益構造を取り上げます。

売上の中心となるクレーンゲームにも、景品原価、筐体費用、人件費、賃料、電気代がかかります。

帝国データバンクが示した「売上100円当たり営業利益6円」という数字を起点に、ゲームセンターが売上を作っても利益を残しにくい理由を整理します。

ゲムスクでは、ゲームにまつわる疑問を一次資料と数字から解決します。

ゲームセンター、ゲーム会社の歴史、作品の制作背景、玩具、配信環境まで、事実と意見を分けて記録していきます。

👉 ゲムスクの最新記事・配信情報を見る

参考資料

※JAIAの売上高・設置台数には、会員企業の実績に加え、会員外企業の推計が含まれます。1台当たり売上は、公開された推計売上高を推計設置台数で単純に割ったゲムスク独自の参考値であり、個別店舗の売上や利益を示すものではありません。統計数値は2026年6月確認。

コメント

タイトルとURLをコピーしました