ゲームセンターへ行き、遊びたいゲームの前に座る。
財布から100円玉を取り出し、投入口へ入れる。
ガチャリ。
画面に「CREDIT 1」と表示され、ゲームが始まります。
あまりにも当たり前の光景ですが、考えてみると不思議です。
飲み物も、お菓子も、電車代も、昔より高くなりました。それなのに、ゲームセンターのビデオゲームには、今でも「1プレイ100円」が数多く残っています。
そもそも、ゲームの料金を100円と決めたのは誰なのでしょうか。
ゲームセンターの料金に全国共通の決まりはない
最初に結論を言うと、国やゲーム業界が全国一律で「ゲームは1回100円」と決めたわけではありません。
ゲームの料金は、基本的に店舗や機械ごとに設定されます。
- 1プレイ50円のゲーム
- 100円で2回遊べるゲーム
- 1プレイ200円以上の大型ゲーム
- 電子マネー専用のゲーム
このように、実際の料金はさまざまです。
それでも長い間、ゲームセンターの標準料金として100円が定着しました。
主な理由は、次の3つです。
- 100円硬貨が機械で扱いやすかった
- 1970年代後半のゲームブームで全国に広まった
- 一度100円が定着すると、別の料金へ変更しにくかった
つまり、1プレイ100円は誰かが決めた絶対的なルールではありません。
硬貨の仕組み、ゲーム機の構造、店舗の商売、そして利用者の習慣が重なって生まれた価格なのです。
100円玉はゲームセンターより先に普及していた
日本で初めて100円硬貨が発行されたのは1957年です。
当初は銀を使用した硬貨でしたが、自動販売機などの普及によって100円硬貨の需要が増加しました。
その後、銀価格の上昇などを理由に、1967年から現在と同じ白銅製の100円硬貨が発行されています。
ゲームセンターのビデオゲームが本格的に広がる前から、日本ではすでに、
機械に100円玉を入れて、商品やサービスを購入する
という仕組みが普及し始めていたのです。
ゲーム機にとっても、100円玉は非常に都合のよい硬貨でした。
- 10円玉を何枚も投入させる必要がない
- 紙幣を読み取る高価な装置も必要ない
- 客は硬貨を1枚入れるだけで遊べる
- 店舗は機械の中の硬貨を回収すればよい
現在のスマートフォン決済と比べれば単純ですが、当時としては非常に分かりやすい料金回収システムでした。
100円文化を全国へ広げたスペースインベーダー
「ゲームをするなら100円」というイメージを日本中へ広げた作品があります。
1978年にタイトーから発売された『スペースインベーダー』です。
スペースインベーダーは、日本各地で爆発的な人気となりました。
当時は、現在のゲームセンターでよく見る縦型筐体だけでなく、画面をテーブルの中に埋め込んだテーブル型ゲーム機が喫茶店などにも設置されていました。
プレイヤーはテーブルの上に100円玉を積み、ゲームオーバーになると次の100円玉を投入して遊んだといわれています。
スペースインベーダーが1プレイ100円を最初に発明したわけではありません。
しかし、
ゲームを遊ぶためには100円玉が必要
というイメージを全国規模で定着させた代表的な作品だったことは間違いありません。
「日本中から100円玉が消えた」は本当なのか
スペースインベーダーブームには、有名な伝説があります。
人気がありすぎて、日本中の銀行から100円玉がなくなった。
ゲーム好きなら、一度は聞いたことがあるかもしれません。
ただし、この話はそのまま事実として断定しない方が安全です。
実際には、ゲームセンターや喫茶店に大量の100円玉が集まり、両替用の硬貨が不足した店舗や地域があったと考えられます。
しかし、次の3つは別の話です。
- 店舗で両替用の100円玉が不足した
- 銀行が100円玉の確保に追われた
- 日本全国の銀行から100円玉が消えた
スペースインベーダーの人気が非常に大きかったため、ブームの規模を表現する伝説として話が広がった可能性があります。
面白い話ほど、少しずつ大げさになって伝わる。
これもゲーム史の面白いところです。
消費税が導入されても110円にできなかった
1989年、日本で消費税が導入されました。
自動販売機の飲み物などは、100円から110円へ値上げされていきました。
それなら、ゲームセンターも1プレイ110円にすればよさそうです。
ところが、硬貨式ゲーム機では簡単に値上げできませんでした。
100円玉を1枚入れる仕組みから110円へ変更するには、100円玉だけでなく10円玉も判別できる投入口が必要になります。
利用者も毎回、100円玉と10円玉を用意しなければなりません。
100円玉だけで料金を変更するなら、次は200円です。
しかし、
1プレイ100円から200円へ値上げ
では、いきなり料金が2倍になってしまいます。
日本アミューズメント産業協会の資料でも、現金式ゲームでは100円以外の料金設定が難しく、店舗側が消費税分を負担してきた問題が説明されています。
ゲームセンターは値上げしなかったのではありません。
値上げしたくても、硬貨式ゲーム機では110円や120円に変更しにくかったのです。
10円玉も使えるゲーム機はなぜ広まらなかったのか
ゲーム機に100円玉と10円玉の両方を入れられるようにすれば、110円や120円に設定できます。
実際に、複数種類の硬貨へ対応する仕組みも試されました。
しかし、利用者にとっては面倒です。
- 100円玉だけでは遊べない
- 10円玉を用意する必要がある
- 両替機にも10円玉が必要になる
- 投入する硬貨の枚数が増える
店側にとっても、硬貨の管理や両替の手間が増えます。
わずか10円の値上げでも、機械で料金を回収する商売では大きな変更だったのです。
100円を維持する代わりにゲームセンターが変わった
1プレイ100円を値上げできないなら、ゲームセンター側は別の方法で売上を作らなければなりません。
そこで増えていったのが、次のようなゲームや仕組みです。
- 1回のプレイ時間が比較的短いゲーム
- 追加料金でカードやアイテムを購入するゲーム
- 1プレイ200円以上の大型ゲーム
- クレーンゲームやプライズゲーム
- 電子マネーに対応したゲーム
利用者から見ると、1プレイ100円は安くてありがたい料金です。
しかし、1回のプレイ時間が長ければ、店側の1時間当たりの売上は低くなります。
ゲームセンターの100円文化が守られてきた裏側では、設置されるゲームや店舗の商売そのものが変化していたのです。
電子マネーなら120円や150円にも設定できる
硬貨では、100円の次が200円になってしまいます。
しかし、電子マネーなら120円、130円、150円といった細かな料金設定が可能です。
コナミは2009年、アーケードゲーム向け電子マネーサービス「PASELI」を開始しました。
電子決済であれば、店舗やゲームの内容に合わせて柔軟に料金を設定できます。
- 通常プレイは100円
- 特別モードは120円
- 追加コンティニューは80円
- 曲数を増やして150円
このような設定も可能になります。
今後、ゲームセンターのキャッシュレス化が進めば、
ゲームセンターは1回100円
という常識は、少しずつ変わっていくかもしれません。
ただし、決済端末の導入には費用がかかります。
古いゲーム機をすべて電子マネー対応にすることも簡単ではありません。
そのため当面は、100円玉を入れるゲームと、電子決済を使うゲームが共存していくでしょう。
友達に話せるゲーム雑学
今回の話を友達に説明するなら、これだけ覚えておけば十分です。
ゲームセンターの100円は、誰かが決めたルールではない。
100円玉が機械で使いやすく、スペースインベーダーブームで全国に定着した。消費税が始まっても、硬貨式ゲーム機では110円にしにくかったため、100円文化が長く残った。
まとめ:1枚の100円玉にはゲームセンターの歴史が詰まっている
ゲームセンターの1プレイが100円になった理由は、一つではありません。
- 100円硬貨が機械で扱いやすかった
- スペースインベーダーブームで全国に広まった
- 硬貨式では110円や120円に値上げしにくかった
- 利用者にも「ゲームは100円」という感覚が定着した
この複数の理由が重なり、1プレイ100円という料金が半世紀近く残ることになりました。
普段、何気なくゲーム機へ投入している100円玉。
その1枚には、日本の硬貨、自動販売機、喫茶店、スペースインベーダー、消費税、そしてゲームセンター経営の歴史まで詰まっています。



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