ゲームの残機はなぜ3つが多い?「3機スタート」が定番になった理由

レトロゲーム風の3つの残機アイコンと「なぜ残機は3?」の文字 ゲームの歴史

ゲームを始める。

画面の端を見ると、主人公の小さなマークが並んでいる。

残り3機。

1回やられる。

まだ大丈夫。

もう1回やられる。

あとがない。

そして最後の1機を失えば――。

GAME OVER。

昔のアクションゲームやシューティングゲームでは、こんな「残機制」が当たり前でした。

ところで、なぜ残機は3つのゲームが多かったのでしょうか。

1機では厳しすぎます。

それなら5機でも10機でもよさそうです。

しかし、ゲームの歴史を見ていくと「3」という数字が何度も登場します。

実はこれ、誰か一人が「ゲームの残機は3にする」と決めたわけではありません。

ゲームセンターの商売と、プレイヤーにもう一度挑戦させるゲーム設計。その両方にとって、3がちょうどよかった。

そこから「3機スタート」が定番になっていったと考えるのが自然です。

そもそも「残機」とは何なのか

残機とは簡単に言えば、ゲームオーバーになるまでに失敗できる回数です。

シューティングゲームなら「自機」。

アクションゲームなら「主人公の人数」。

英語では一般に「Lives」と表現されます。

主人公が敵に触れたり、穴へ落ちたりすると1機減る。

残機をすべて失えばゲームオーバー。

今では当たり前の仕組みに見えますが、すべてのゲームに最初から残機があったわけではありません。

1972年に登場した『Pong』のように、点数を競って勝敗を決めるゲームもありました。

その後、敵に撃たれる、障害物にぶつかる、穴へ落ちるといったゲームが増えると、

何回失敗したらゲーム終了にするのか

を決める必要が出てきました。

実は「残機は3」という公式ルールはない

ここは重要です。

ゲームの残機を3にしなければならない、という業界共通のルールはありません。

ゲームによっては1機のものもあれば、5機のものもあります。

残機そのものが存在しないゲームもあります。

さらに昔の業務用ゲーム機では、店舗側が設定を変更できる作品もありました。

つまり、

昔のゲームは全部3機だった

というわけではありません。

正確には、

3機前後を採用するゲームが多く、それがゲーム文化の定番として定着した

ということです。

理由その1 1機では100円が一瞬で終わってしまう

昔のゲームセンターを想像してみましょう。

プレイヤーは100円玉を入れてゲームを始めます。

ところが、初めて遊ぶゲームで開始10秒後に敵へぶつかった。

その瞬間、ゲームオーバー。

これではどうでしょう。

もう一度100円を入れたいと思う人もいるでしょう。

しかし、

100円払ったのに10秒で終わった

と思われれば、二度と遊んでもらえない可能性もあります。

そこで必要になるのが、失敗してももう一度挑戦できる仕組みです。

1回ミスしても復活する。

また失敗しても、もう一度だけ挑戦できる。

3機あれば、初心者でもゲームの操作やルールをある程度理解する時間を得られます。

「失敗した。もう一度やってみよう」がゲームの中で2回発生する。

これはゲームへ慣れてもらううえで非常に都合のいい仕組みです。

理由その2 残機が多すぎると今度はゲームセンターが困る

では、最初から10機あげればもっと親切なのではないでしょうか。

家庭用ゲームなら、それでも構いません。

しかし、昔のゲームセンターでは事情が違います。

ゲーム機は商売道具です。

1人が100円で長時間遊び続ければ、その間、次の人はゲームを遊べません。

店舗に入る売上も100円のままです。

極端な話、100円で1時間遊ばれてしまうゲームと、一定時間で次のプレイヤーへ交代するゲームでは、店舗側の売上は大きく変わります。

だからといって、すぐゲームオーバーにすれば客が離れる。

長すぎれば、今度は店が困る。

その間にある数字として、3機程度は扱いやすかったと考えられます。

少なすぎず、多すぎない。

これがポイントです。

「3」はゲームを覚える回数としても使いやすい

3機あるゲームでは、こんな流れが起きます。

  • 1機目:何が起きるのか分からず失敗する
  • 2機目:さっきの失敗を覚えて再挑戦する
  • 3機目:今度こそ先へ進もうと本気になる

もちろん、すべてのゲームがこの考え方で作られたわけではありません。

しかしゲームデザインとして考えると、3回の挑戦には分かりやすいリズムがあります。

1回だけなら偶然失敗しただけで終わってしまいます。

2回なら、覚えた直後に終わります。

3回あると、

失敗 → 学習 → 再挑戦

という流れを作りやすくなります。

そして最後の1機になった瞬間、プレイヤーの緊張感も一気に高まります。

「あと1回しかない」こと自体がゲームになる。

残機は単なる残り回数ではなく、プレイヤーへ緊張感を与える仕組みでもあったのです。

残機が減るから「1UP」がうれしかった

昔のゲームでは、残機を増やす「1UP」も重要なごほうびでした。

特定のアイテムを取る。

一定の点数を獲得する。

隠された場所を見つける。

すると残機が1つ増える。

現在のゲームでいえば、強力な武器やレアアイテムを手に入れるような喜びです。

残機に限りがあるからこそ、1機増えることに大きな価値がありました。

『スーパーマリオブラザーズ』でも、1UPキノコを取ったり、コインを100枚集めたりするとマリオが1人増えます。

つまり残機制は、

  • ゲームオーバーまでの回数を決める
  • プレイヤーへ緊張感を与える
  • 1UPというごほうびを作る
  • 隠しアイテムを探させる
  • 高得点を狙う意味を増やす

といった複数の役割を持っていました。

「あと1機」がプレイヤーを熱くさせた

残機が3から2になる。

まだ余裕があります。

2から1になる。

ここで空気が変わります。

普段なら強引に進む場所でも慎重になる。

危険なアイテムを取りに行くか迷う。

ボス戦では手に汗を握る。

ゲーム側は新しい敵を増やしたわけでもありません。

しかし画面に表示された数字が「1」になっただけで、プレイヤー自身がゲームを難しく感じるようになります。

これは非常に安上がりで強力なゲームデザインです。

残機の数字そのものが、緊張感を作っていたのです。

ゲームセンターでは「うまい人ほど得をする」仕組みだった

残機制には、もう一つ面白いところがあります。

ゲームが上手な人ほど、同じ100円で長く遊べます。

初心者なら数分でゲームオーバー。

上級者なら、1UPを獲得しながら何十分も遊ぶ。

つまり同じ料金でも、プレイヤーの腕によって遊べる時間が変わります。

これが昔のゲームセンターでは大きな魅力でした。

お金をたくさん入れた人が必ず強いのではありません。

上手になれば100円の価値そのものが大きくなる。

だからプレイヤーは何度も遊び、少しずつ上達していきました。

家庭用ゲームにも残機制が持ち込まれた

ゲームセンターから家庭用ゲーム機の時代になっても、残機制は残りました。

しかし、ここで少し不思議なことが起きます。

家庭用ゲームなら、プレイヤーが長く遊んでもメーカーの売上は減りません。

ゲームセンターのように、次のお客さんへ交代させる必要もありません。

それでも残機制は使われ続けました。

理由の一つは、すでに残機が「ゲームらしいルール」として定着していたからでしょう。

さらに残機があることで、

  • 失敗への緊張感
  • ゲームオーバーの恐怖
  • 1UPを取る喜び
  • 上達した実感

を簡単に作ることができます。

ゲームセンターの商売から生まれた仕組みが、家庭用ゲームではゲームデザインとして生き残ったわけです。

では、なぜ最近のゲームでは残機が減ったのか

現在のゲームでは、昔ながらの残機制を採用しない作品も増えています。

理由はゲームの遊ばれ方が変わったからです。

現在では、

  • チェックポイントからすぐ再開できる
  • オートセーブされる
  • 何度失敗しても再挑戦できる
  • 体力ゲージでダメージを管理する

といった仕組みが一般的になりました。

家庭で何十時間も遊ぶゲームなら、残機を全部失ったから最初からやり直し、という仕組みは必ずしも必要ありません。

逆に、昔のゲームのような緊張感を狙って、あえて復活回数を制限する作品もあります。

つまり残機は消えたのではなく、ゲームの目的に応じて別の仕組みに置き換えられていったのです。

「3機の起源」を一人の開発者に求めるのは危険

ここで、ゲーム雑学として一つ注意しておきたいことがあります。

インターネットでは、

残機が3なのは○○というゲームが最初

あるいは、

○○という開発者が3回がちょうどいいと決めた

といった説明を見かけることがあります。

しかし、ゲーム全体について「残機3の起源」を一人の人物や一本のゲームへ決められるほど単純ではありません。

初期のゲームにはさまざまなルールがあり、残機数も作品によって違いました。

その中で3機前後の設定が何度も使われ、プレイヤーにも店側にも馴染みのある数字として定着していった。

こちらの方が実際のゲーム史に近い見方です。

友達に話せるゲーム雑学

今回の話を学校や友達との会話で使うなら、これだけ覚えておけば十分です。

ゲームの残機が3なのは、誰かが決めたルールじゃない。
1機ではすぐ終わりすぎる。たくさん与えると長く遊べすぎる。ゲームセンターで「もう一度挑戦できるけど、いつか終わる」というバランスを取りやすかったため、3機前後が定番になったと考えられる。

そして、残機が少ないからこそ「1UP」がうれしかった。

ここまで話せれば、かなりのゲーム雑学通です。

まとめ:残機3は「ちょうどいい失敗回数」だった

ゲームの残機に3が多かった理由をまとめると、こうなります。

  • 残機3という業界共通ルールがあったわけではない
  • 1機だけでは初心者がすぐゲームオーバーになる
  • 残機が多すぎると1回のプレイが長くなりすぎる
  • 3回程度なら失敗してゲームを覚える余裕がある
  • 最後の1機が強い緊張感を生む
  • 残機が限られているから1UPに価値が生まれる

たった一つの数字ですが、その裏にはゲームセンターの商売とゲームデザインの両方が隠れています。

昔のゲームを起動して「残り3機」と表示されたら、少しだけ思い出してみてください。

その3つは単なる命の数ではありません。

「失敗しても、もう一度やりたい」と思わせるために磨かれてきた、ゲームの仕組みそのものなのです。

参考資料

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