店の外から中を見る。
薄暗い。
中へ入ると、ずらりと並んだゲーム機。
暗い店内の中で、ブラウン管だけが青や赤や黄色に光っている。
ピコピコという電子音。
ゲームオーバーの音。
そして、奥の方には何をしているのかよく分からないお兄さんたち。
昔のゲームセンターには、独特の雰囲気がありました。
そこで一つ疑問です。
なぜ昔のゲームセンターは、あんなに暗かったのでしょうか。
「不良が集まる場所だったから?」
「怪しい雰囲気を出すため?」
そう思うかもしれません。
しかし、それだけではありません。
最大のポイントは、昔のゲーム機で使われていたブラウン管(CRT)です。
明るい照明の下では画面へ光が映り込み、ゲームが見づらくなります。
つまり昔のゲーセンの暗さには、
ゲーム画面をちゃんと見せるため
という、かなり現実的な理由があったのです。
結論:暗い方が昔のゲーム画面は見やすかった
現在のゲームセンターでは、大型液晶モニターや明るいLED照明が使われています。
しかし、昔のアーケードゲームの多くはブラウン管でした。
ブラウン管の画面はガラス面を持っています。
そのため店内を明るくすると、
- 天井の蛍光灯
- 店の入口から入る光
- 窓からの外光
- 周囲の照明
などが画面へ映り込みます。
特に黒い背景を使ったゲームでは、この影響が分かりやすくなります。
暗い宇宙を飛ぶシューティングゲームを遊んでいるのに、画面の中央へ蛍光灯が映っていたら邪魔です。
そこで店内の照明を落とす。
するとブラウン管の映像が浮き上がり、キャラクターや弾が見やすくなります。
ゲームセンターが暗かった大きな理由の一つは、単純にゲームを見やすくするためだったのです。
そもそもブラウン管とは何なのか
今の小中学生には「ブラウン管」と言っても分からないかもしれません。
ブラウン管とは、昔のテレビやパソコンモニター、アーケードゲームなどで使われていた映像表示装置です。
英語ではCRTと呼ばれます。
現在の薄い液晶テレビとは違い、奥行きがあり、テレビ本体もかなり重いものでした。
昔のゲームセンターの筐体が大きくて重かった理由の一つも、このブラウン管が入っていたからです。
そして、その画面の前面にはガラスがあります。
ディスプレイへ外部の光が当たると反射が生じ、映像のコントラストが低下したり、光源そのものが映り込んだりします。
CRT画面に対する外光・照明の反射は、ディスプレイ研究でも問題として扱われてきました。
だから、
画面への余計な光を減らす
というのは、昔のゲーム環境では非常に理にかなった方法だったのです。
『スペースインベーダー』には暗い店がよく似合った
1978年、タイトーから『スペースインベーダー』が登場します。
このゲームは大ブームとなり、ゲームセンターだけでなく、喫茶店にも大量のゲーム機が置かれるようになりました。
タイトーによれば、スペースインベーダーをテーブル筐体に入れて販売したところ、ゲームコーナーだけでなく喫茶店にも広がり、最終的にはテーブル筐体の方が主流になりました。
テーブル筐体とは、その名前の通りテーブルの中にゲーム画面が入っている機械です。
椅子に座り、テーブルを上からのぞき込むようにしてゲームを遊びます。
飲み物を置く、本を置く。
その同じテーブルでゲームもできる。
今考えると、かなり不思議な機械です。
しかし当時は、このスタイルが喫茶店との相性抜群でした。
ゲームセンターは最初から今の形だったわけではない
現在では「ゲームセンター」と聞けば、ゲーム機が何十台も並んだ専門店舗を思い浮かべます。
しかし、日本のアーケードゲーム文化は、ゲームセンターだけで成長したわけではありません。
1970年代末には、
- 喫茶店
- ボウリング場
- デパート
- 遊園地
- 駄菓子屋
など、さまざまな場所へゲーム機が置かれていました。
文化庁のメディア芸術カレントコンテンツでも、1970年代末のテーブル型筐体や『スペースインベーダー』の流行によって、ゲームセンター産業が全国的に大きく拡大したことが紹介されています。
👉 文化庁メディア芸術カレントコンテンツ「ゲームセンターと社会との関わり」
つまり、初期のゲームセンター文化には、喫茶店や夜の娯楽空間の雰囲気も混ざっています。
そこへ、ブラウン管を見やすくするための薄暗さが加わりました。
こうして、
暗い店内にゲーム画面だけが光っている
という、後の「ゲーセンらしい風景」が出来上がっていきます。
暗いからゲームの世界へ入り込みやすかった
実用上の理由から暗くした店内には、もう一つ効果がありました。
ゲーム画面が目立ちます。
周囲が暗ければ、視線は自然に明るいブラウン管へ向かいます。
横に何人いようが、店の壁がどんな色だろうが、ゲームを始めれば画面の方が強く目に入ります。
これは映画館に少し似ています。
映画館も上映中は暗くなります。
その方がスクリーンへ集中できるからです。
ゲームセンターも結果的に、
店へ入った瞬間、日常とは違う空間になる
という効果を持つようになりました。
最初は画面を見やすくするためだった暗さが、やがてゲームセンターそのものの演出にもなっていったのです。
「暗いから不良が集まった」のか?
昔のゲームセンターについて語ると、必ず出てくるイメージがあります。
不良のたまり場。
漫画やドラマでも、昔のゲームセンターは少し危ない場所として描かれることがありました。
確かにゲームセンターは、青少年問題との関係で社会的な議論や規制の対象になっていきます。
しかし、
不良を集めるために店を暗くした
という話ではありません。
むしろ、
- ブラウン管を見るため薄暗くなる
- ゲーム機が並び独特の空間になる
- 若者が長時間集まる
- 外から中の様子が分かりにくい店舗もある
といった条件が重なったことで、「ちょっと怖い場所」というイメージが強まっていったと見る方が自然です。
ゲームセンターと青少年問題については、1960年代以降の各地の青少年保護育成条例などによる娯楽施設への規制、そして後の風営法による規制へとつながっていきます。
「風営法でゲーセンを暗くした」は逆
ここはゲーム雑学として覚えておきたいところです。
ゲームセンターが暗い理由を、
風営法でそう決められていたから
と説明するのは正しくありません。
ゲームセンターが風俗営業の対象となったのは、1984年の法改正を受け、1985年に施行されてからです。
それ以前から、暗いゲームセンターやインベーダーハウスは存在していました。
そして現在、ゲームセンターなどの営業には、逆に一定以上の明るさを保つ基準があります。
現在の風営法上のゲームセンター等は5号営業にあたり、営業所の照度は10ルクス以上が基準とされています。
つまり法律は、
ゲームセンターを暗くしなさい
と言っているのではありません。
むしろ、暗くしすぎないための最低ラインを決めています。
10ルクスってどれくらい暗い?
ここで「10ルクス」と言われても、普通は分かりません。
ルクスとは、場所の明るさを表す単位です。
ただし実際の明るさの感じ方は、照明の位置や周囲の環境によっても変わります。
重要なのは数字そのものより、ゲームセンターには法律上も最低限の照度基準があり、真っ暗な状態で営業してよいわけではないという点です。
昔のゲーセンも「暗ければ暗いほどいい」というものではありませんでした。
客が歩けないほど暗ければ危険です。
両替機も見えません。
落とした100円玉も探せません。
ゲーム画面は見せたい。
でも店内は歩けるようにしたい。
この間の明るさが必要だったわけです。
なぜ今のゲームセンターは昔より明るいのか
現在のゲームセンターへ行くと、昔のイメージとはかなり違います。
明るい。
広い。
家族連れも多い。
クレーンゲームが大量に並んでいる。
理由の一つは、ゲームセンターで使われる機械そのものが変わったことです。
ブラウン管中心だった時代から、液晶ディスプレイを使うゲームが主流になりました。
さらに店の中心も、ビデオゲームだけではありません。
- クレーンゲーム
- プリントシール機
- 音楽ゲーム
- カードゲーム
- 大型体感ゲーム
など、多様な遊びが並びます。
景品を選ぶクレーンゲームでは、逆に商品が明るく見えた方が魅力的です。
若者だけではなく、子どもや家族連れを呼び込む店舗なら、入口から中が明るく見えることにも意味があります。
ゲーム機が変われば、店の照明も変わる。
ゲームセンターの明るさは、その時代の商売そのものを映しているのです。
それでも暗いゲームコーナーが残っている理由
現在でも、すべてのゲームセンターが明るいわけではありません。
音楽ゲームやビデオゲームが集まる一角だけ照明を落としている店もあります。
理由は単純です。
光るゲーム画面は、少し暗い方が格好いい。
ネオンやLEDが暗い空間で光ると、それだけで非日常感が出ます。
昔は機械の事情から必要だった暗さ。
それが長い年月を経て、今度は「ゲームセンターらしさ」を作るデザインとして残っているわけです。
友達に話せるゲーム雑学
今回の話を友達へ説明するなら、これだけ覚えておけば十分です。
昔のゲーセンが暗かった大きな理由は、ブラウン管に照明が映り込むとゲーム画面が見づらかったから。
しかもインベーダー時代にはゲーム機が喫茶店にも広がり、その薄暗い雰囲気が後の「ゲーセンらしさ」にもつながった。
そしてもう一つ。
「風営法で暗くしていた」は逆。
現在はゲームセンター等に最低照度の基準があり、暗くしすぎてはいけない。
ここまで知っていれば、かなり使えるゲーム雑学です。
まとめ:ゲーセンの暗さにもちゃんと理由があった
昔のゲームセンターが暗かった背景をまとめると、こうなります。
- 昔のゲームではブラウン管が使われていた
- 明るい照明はブラウン管へ映り込みやすかった
- 照明を落とすとゲーム画面が見やすくなった
- スペースインベーダー時代にはテーブル筐体が喫茶店にも広がった
- 薄暗い空間そのものが「ゲーセンらしい雰囲気」になった
- ゲームセンターが風営法の対象となったのは1985年から
- 現在は逆に最低限の照度基準が設けられている
昔のゲーセンが暗かったのは、ただ怪しい店だったからではありません。
画面を見やすくするという、ゲーム機側の都合がありました。
そして、その必要から生まれた暗さが、いつしか文化になりました。
暗い店内。
そこに浮かび上がる何十台ものゲーム画面。
今となっては、それ自体が昭和から平成初期のゲームセンターを象徴する風景なのです。


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