ゲームではなぜ敵を倒すとお金を落とす?モンスターは財布を持っているのか

RPG風のモンスターを倒すと大量の金貨が飛び出す様子と「敵を倒すとなぜ金が出る?」の文字 ゲームの歴史

草原を歩いている。

モンスターが現れた。

戦う。

倒す。

すると画面には――。

「10ゴールドを手に入れた!」

……ちょっと待ってください。

そのモンスター、どこに財布を持っていたんだ。

服すら着ていません。

ポケットもありません。

そもそも町で買い物をしている姿を見たこともありません。

それなのに倒すと、なぜか現金が出てきます。

RPGを遊んでいると当たり前すぎて気になりませんが、よく考えるとかなり不思議なルールです。

では、なぜゲームでは敵を倒すとお金が手に入るのでしょうか。

結論から言えば、

モンスターに財布を持たせたかったからではありません。
戦闘に「経験値」と「お金」という2種類の報酬を与え、次の成長につなげるためです。

敵を倒す。

強くなる。

装備を買う。

さらに強い敵へ挑む。

この循環を作るため、ゴールドは非常に便利だったのです。

初代ドラゴンクエストでも敵を倒すとゴールドが手に入った

日本の家庭用RPGを語るうえで重要なのが、1986年に発売された『ドラゴンクエスト』です。

海外版『Dragon Warrior』の説明書では、ゴールドについて、モンスターを倒すことで手に入り、貯めたゴールドを武器・防具・アイテムの購入に使うと説明されています。

つまりゲームの基本は、非常に分かりやすいものでした。

敵を倒す。

経験値を手に入れる。

ゴールドも手に入れる。

町へ帰る。

強い武器を買う。

さらに遠くへ冒険する。

また強い敵を倒す。

戦闘が、そのままキャラクターの成長と買い物の両方につながります。

👉 Dragon Warrior Instruction Manual

ファイナルファンタジーでも戦闘報酬は「経験値+お金」

1987年に発売された初代『ファイナルファンタジー』でも、似た仕組みが採用されています。

任天堂が公開している英語版説明書では、敵との戦闘に勝つと経験値とゴールドを獲得すると説明されています。

ここでも、戦闘によって2種類の成長が起きます。

経験値:キャラクターそのものを成長させる。

お金:武器、防具、魔法、アイテムなどを購入する。

この2本立てが重要です。

もし敵を倒して経験値だけしか手に入らなければ、町の店で買い物をするためのお金を別の方法で稼がなければなりません。

宝箱を探す。

仕事をする。

鉱石を掘る。

商品を売る。

それはそれで面白いゲームになります。

しかし、昔のRPGで毎回そこまで複雑な経済活動をさせれば、冒険のテンポが悪くなります。

だから、

敵を倒せば経験値も金も手に入る

という単純な仕組みは非常に使いやすかったのです。

👉 Nintendo「FINAL FANTASY Instruction Manual」

そもそもRPGではなぜお金が必要なのか

ゲームの世界にお金がなければどうなるでしょう。

敵を倒す。

レベルが上がる。

攻撃力も防御力も自動的に上がる。

これだけでもゲームは作れます。

しかし、それではプレイヤーが「何を買うか」を考える場面がなくなります。

お金があると、選択が生まれます。

例えば所持金が1000ゴールド。

新しい剣は900ゴールド。

新しい鎧は850ゴールド。

回復アイテムも欲しい。

全部は買えません。

そこで考えます。

「攻撃力を上げるか?」

「防御力を上げるか?」

「もう少し金を貯めるか?」

たった一つの通貨を入れるだけで、ゲームに意思決定が増えるのです。

経験値とゴールドは役割が違う

敵を倒した報酬として経験値だけではなくゴールドも与える理由は、両者の役割が違うからです。

経験値は、多くの場合ほぼ自動的に蓄積します。

100経験値を手に入れたから、

「今日は70だけ使って、30を貯金しよう」

とはなりません。

一定量に達すればレベルアップします。

一方、お金は使い方をプレイヤーが決められます。

武器を買う。

防具を買う。

薬を買う。

宿屋へ泊まる。

場合によっては何も買わず貯める。

つまり、

経験値は自動成長。
お金は自分で決める成長。

この2つが同時に存在することで、RPGの成長に幅が出ます。

「あと少しであの剣が買える」が戦う理由になる

敵がお金をくれる仕組みには、もう一つ大きな効果があります。

プレイヤーに戦う理由を作れます。

町の武器屋を見る。

欲しい剣がある。

価格は2000ゴールド。

手持ちは1500ゴールド。

あと500。

そこで町の外へ出ます。

敵を倒します。

100ゴールド。

もう一体。

さらに100ゴールド。

あと300。

気がつけば、

世界を救うため

ではなく、

あの剣を買うため

にモンスターを倒しています。

しかし、その途中で経験値も増える。

レベルも上がる。

剣も買える。

結果として、次の地域へ進めるようになります。

この循環がRPGの基本的な面白さの一つです。

モンスターは本当に財布を持っているのか

ではゲーム世界の中では、どう説明すればいいのでしょう。

スライムを倒した。

5ゴールド。

本当にスライムの体内から硬貨が出てきたのでしょうか。

これは作品によって違います。

そして、多くのゲームではそこまで説明しません。

敵を倒したあとに表示される「10ゴールド獲得」を、

敵が持っていたお金。

敵の装備を売った価値。

戦利品。

討伐報酬。

ゲーム上の省略表現。

どう解釈するかは作品世界によって変わります。

大事なのは、

モンスターが財布を持っているという設定が必要だからゴールドが出る

のではないということです。

プレイヤーへ戦闘報酬を渡す必要があるから、数字としてゴールドが与えられている。

ゲームデザインとしてはこちらが先です。

もし本当に敵の所持金だとすると変なことになる

少し真面目に考えてみましょう。

人間の盗賊。

10ゴールド。

これは分かります。

財布くらい持っていそうです。

ゴブリン。

20ゴールド。

まあ、どこかから盗んだのかもしれません。

オーク。

50ゴールド。

何か買い物をする文化があるのでしょう。

ここまではまだいい。

では、

巨大な植物。

毒キノコ。

幽霊。

巨大な魚。

岩の怪物。

こいつらはどこに財布を隠しているのでしょうか。

幽霊に至っては、物理的な財布を持てるのかすら怪しい。

だから「敵が落とすゴールド」をすべて現実の財布として考えると、かなり無理があります。

ある程度はゲームとして割り切った方が自然なのです。

敵によってもらえるお金が違うのも重要

弱い敵は少額。

強い敵は高額。

この仕組みにも意味があります。

ゲームが進むと、武器や防具の価格も上がります。

最初の町では100ゴールドだった剣が、後半では1万ゴールド。

それなのに最後までスライムが5ゴールドしかくれなければ、買い物が終わりません。

そこで強い敵ほど多くのお金を与えます。

これによって、

強い地域へ進む。

強い敵を倒す。

多くのお金を稼ぐ。

高価な装備を買う。

さらに強い地域へ進む。

という成長が成立します。

初代『Dragon Warrior』の説明書にも、特定の強い敵を利用してゴールドを多く稼ぐヒントが記されています。

つまり早い時期から、

敵の強さと報酬額

はゲーム攻略の一部だったのです。

「金稼ぎ」という遊びまで生まれた

ここからRPG独特の文化が生まれます。

金稼ぎ。

同じ場所を歩く。

敵と戦う。

倒す。

また歩く。

また敵が出る。

また倒す。

ゲームの物語はほとんど進んでいません。

しかし所持金だけは増えていきます。

そして目的の装備を購入する。

すると、それまで苦戦していた敵を簡単に倒せるようになる。

数字を貯める作業なのに、なぜか気持ちいい。

これは現代のゲームにも残っています。

ゴールド。

コイン。

ポイント。

素材。

ゲームによって名前は違いますが、

敵を倒す → 報酬を集める → 強化する

という仕組みは今でも非常に多く使われています。

お金ではなく「素材」を落とすゲームも増えた

ゲームがリアルになってくると、

狼を倒したら100ゴールド

では少し変に見えるようになります。

そこで別の方法も使われるようになりました。

例えば狼なら、

毛皮。

牙。

肉。

爪。

こうした素材を落とす。

プレイヤーは素材を町へ持っていき、売る。

するとお金になる。

こちらの方が世界観としては自然です。

ただし、一つ手順が増えます。

昔ながらのRPGなら、

敵を倒す → 100ゴールド

で終わります。

素材方式なら、

敵を倒す → 毛皮を入手 → 町へ行く → 店を探す → 毛皮を売る → 100ゴールド

となります。

リアルにはなります。

しかし面倒にもなります。

どこまで現実らしくして、どこまで省略するか。

ここでもゲームデザインの判断が出てくるのです。

人間のトレーナーからお金をもらうなら不自然ではない

逆に、世界観の中でお金の出どころを分かりやすくしたゲームもあります。

例えば『ポケットモンスター』シリーズでは、野生のポケモンそのものから通常のお金を回収するというより、トレーナーとのバトルによって「おこづかい」を得る仕組みが使われています。

任天堂の『ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン』紹介ページでも、トレーナーとの再戦によって「おこづかいを稼げる」と紹介されています。

👉 任天堂「ポケットモンスター ファイアレッド・リーフグリーン」

これなら、

人間のトレーナー。

財布を持っている。

バトルする。

勝った側へお金を払う。

という流れなので、少なくとも「野生動物から現金が出てきた」より説明しやすくなります。

討伐依頼にすればもっと自然になる

もう一つの方法が、クエスト報酬です。

町の人から依頼を受けます。

「森のモンスターを5匹倒してください」

倒す。

町へ帰る。

依頼人から500ゴールド。

これなら非常に自然です。

敵がお金を持っている必要がありません。

仕事をしたから報酬をもらう。

現実世界とほぼ同じです。

そのため現代のRPGやオンラインゲームでは、敵から直接得る報酬と、クエスト達成報酬を組み合わせる方式も多く見られます。

しかし「直接ゴールド」の方が気持ちいいこともある

では、全部クエスト報酬にすればいいのでしょうか。

そうとも限りません。

敵を倒す。

+100G。

また倒す。

+150G。

数字がその場で増えます。

非常に分かりやすい。

プレイヤーは、

戦った成果が出た

とすぐに感じられます。

毎回町へ戻って報告する必要もありません。

ゲームとしての気持ちよさだけを考えれば、敵から直接お金をもらう仕組みには今でも強い利点があります。

敵を倒す理由を二重にしている

ここまで整理すると、「経験値+お金」という仕組みがかなり優秀だと分かります。

モンスター1匹を倒すだけで、

経験値:レベルアップに近づく。

お金:欲しい装備に近づく。

二つの目標が同時に進みます。

だから同じ敵を何度か倒していても、

「あと100経験値でレベルアップ」

「あと500ゴールドで新しい剣」

という別々の楽しみがあります。

片方を達成すると、今度はもう片方が近くなる。

そして、ついもう一戦。

昔のRPGから使われている、かなり強力な仕組みなのです。

現実的に考えすぎるとゲームは成立しなくなる

「でもモンスターがお金を持っているのはおかしい」

その通りです。

現実的に考えればおかしい。

しかし、前回扱った宿屋も同じです。

剣で斬られても一晩で全回復。

これも現実にはあり得ません。

ゲームには、現実より遊びやすさを優先するルールがあります。

敵を倒したらすぐお金が入る。

宿屋へ泊まればすぐ回復する。

100ゴールド集めたら武器を買える。

どれも現実を細かく再現してはいません。

しかしプレイヤーは説明されなくても理解できます。

ゲームでは「分かりやすい嘘」が、非常に役に立つのです。

友達に話せるゲーム雑学

今回の話を友達に説明するなら、これだけ覚えておけば十分です。

モンスターを倒すとお金が出るのは、モンスターが財布を持っているからではない。
戦闘で経験値とお金を同時に与えて、「レベルアップ」と「装備購入」の両方を進められるようにしたゲーム上の仕組みなんだ。

そしてさらに、

最近のゲームでは「敵が現金を落とすのは変だ」という問題を、素材を落としたり、討伐報酬にしたりして自然に見せる作品もある。

と付け加えれば完璧です。

まとめ:敵のお金は「財布」ではなく成長の燃料だった

ゲームで敵を倒すとお金が手に入る理由をまとめます。

  • 戦闘したプレイヤーへすぐ報酬を与えられる
  • 経験値とは別に装備を強化できる
  • 武器・防具・アイテムを選ぶ楽しみが生まれる
  • 「あと少しで欲しい装備が買える」という戦う理由を作れる
  • 敵が強くなるほど報酬を増やせばゲームの進行と経済を合わせられる
  • モンスターが本当に現金を持っていると考える必要はない
  • 現代では素材、賞金、クエスト報酬など別の表現も使われている

スライムを倒す。

5ゴールド。

財布は見当たりません。

それでも勇者の所持金は増えます。

理由は単純です。

その5ゴールドが、次の剣、次の町、次の冒険へプレイヤーを進ませるからです。

だから次にゲームで、裸同然のモンスターからゴールドが出てきたら、こう考えてください。

「こいつ、財布どこに隠してたんだ?」

そして、その答えはおそらく――。

「そこはゲームだから気にするな」です。

参考資料

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